日本の介護業界が直面する深刻な人材不足。その中で「特定技能」制度は、国を挙げた解決策として注目を集めています。特に、常時介護が必要な高齢者を受け入れる特別養護老人ホーム(特養)では、外国人介護人材の存在が不可欠になりつつあります。
本記事では、特養における外国人介護人材の導入方法や制度の概要、選ぶべき登録支援機関の基準、現場での活用メリットや成功事例を、介護施設長や理事長の視点で詳細に解説。外国人採用を検討している施設運営者の方々にとって、信頼できる情報を提供する保存版のガイドです。
特定技能制度とは?
特定技能制度は、2019年に日本政府が導入した外国人就労支援の制度で、特定の業種における人手不足を補うことを目的としています。介護はその対象業種のひとつであり、「特定技能1号」の在留資格により、最大5年間の就労が可能です。
この制度を活用するには、外国人が「介護技能評価試験」と「日本語能力試験N4以上」に合格している必要があります。これにより、一定水準の日本語力と介護スキルを備えた人材が就業できるため、即戦力としての活用が期待されます。
特養での受け入れが認められている理由
特養は、要介護度が高い高齢者が入所する施設であり、日常的に身体介護や医療的ケアが求められます。厚生労働省は、こうした業務を担える人材確保の一環として、特定技能外国人の受け入れを認可しています。
特養における外国人介護人材の従事業務には、以下が含まれます:
- 入浴・排せつ・食事などの身体介護
- 移乗・移動の補助、見守り
- 清掃、洗濯、ベッドメイキング等の生活支援
- 介護記録の記入やシステム入力
「身体介護を含む業務」であることが条件となっており、単なる補助作業では対象になりません。
特養における特定技能人材の導入メリット
1. 夜勤や重労働への対応力
夜勤や身体的負担が大きい業務は、日本人職員の離職要因になりがちです。特定技能人材の配置により、こうした業務を分担でき、労働環境の改善につながります。
2. 長期雇用による定着支援
特定技能1号の在留期間は最長5年。さらに「介護」在留資格へ移行すれば、無期限の滞在・就労が可能となります。これにより、職場の安定とノウハウの蓄積が期待できます。
3. 多文化共生の促進
異文化背景を持つスタッフの存在は、入所者にとって新たな刺激となり、施設全体の活気にもつながります。多様性あるチームが形成されることで、サービスの質も向上します。
導入ステップと注意点
ステップ1:登録支援機関の選定
信頼できる登録支援機関は、受け入れ後のトラブルを未然に防ぐ大切なパートナーです。介護分野に特化し、日本語教育や生活支援の実績があるかを確認しましょう。
ステップ2:業務内容と体制の明確化
外国人に任せる業務は、就業規則やマニュアルに明文化し、ガイドラインに基づいた内容としましょう。現場の混乱を防ぎ、監査にも対応しやすくなります。
ステップ3:研修とフォローアップ
導入後の教育は極めて重要です。介護専門用語や日本語コミュニケーション、報連相の習得など、定期的な研修体制を整えることが、早期戦力化への鍵となります。
成功事例:北海道旭川市「希望の家 特別養護老人ホーム」
北海道の「希望の家」では、2022年にインドネシア人2名を採用。日勤からスタートし、半年後には夜勤対応も可能となりました。文化交流イベントの実施により、職員間の信頼関係も強化され、離職率が大幅に改善されたそうです。
まとめ
特別養護老人ホームにとって、特定技能制度は人材不足を根本から解決する手段のひとつです。多様性を取り入れた職場づくりは、入居者の生活の質を高めるだけでなく、職員の働きがいにもつながります。
登録支援機関との連携や導入後の教育体制をしっかりと整備することで、外国人介護人材は大きな戦力となります。変化する介護現場に対応するためにも、今こそ前向きな導入検討が求められます。