日本の在宅介護ニーズが急増する中、訪問介護は最も人材不足が深刻な領域の一つです。そんな中、2025年4月に政府が特定技能制度を活用した訪問介護人材の受け入れを正式に解禁しました。これにより、多くの訪問介護事業者にとって現実的な人材確保の道が開かれました。本記事では、制度の背景から最新の要件、導入準備のポイントまで、現場で活用できる情報を網羅的にご紹介します。
1. なぜ今、訪問介護に特定技能人材導入が注目されているのか
少子高齢化と在宅介護ニーズの拡大により、訪問介護は常に人手不足に悩まされてきました。その解決策の一つとして、外国人労働者の活用が注目されていましたが、制度上、長らく訪問介護での外国人受け入れは認められていませんでした。
2024年6月の有識者検討会を経て、厚生労働省は2025年4月21日に告示を変更し、ついに訪問介護における特定技能外国人の従事が正式に解禁されました。これは業界にとって大きな転換点であり、深刻な人材不足に対する具体的な打開策となるものです。
2. 特定技能で訪問介護に従事するための制度要件
2‑1. 外国人側の資格要件
- 介護技能評価試験に合格していること
- 日本語能力試験N4相当以上の語学力を有すること
- 介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を修了していること
- 訪問系サービス従事には原則1年以上の施設系での実務経験が必要
2‑2. 受け入れ事業者側の遵守事項
外国人が訪問介護に従事するには、事業者側にも一定の基準や体制整備が求められています。以下は厚労省の指針で義務付けられている内容です:
- 業務内容・訪問時対応に関する基本研修の実施
- 同行訪問によるOJTの実施(一定期間)
- 本人に対する業務説明・キャリア設計・成長支援
- ハラスメント防止等の相談窓口の整備
- ICTツールを用いた支援・緊急対応体制の構築
3. 現場での対応ポイントと実務準備
3‑1. 登録支援機関との契約・連携
登録支援機関は、外国人の在留手続きや生活支援、定着支援などを包括的に行うパートナーです。特に訪問介護という個別性・リスクの高い業務においては、実績や経験のある支援機関と提携することが成功の鍵です。
3‑2. OJTと同行訪問の設計
日本人スタッフとの同行訪問を通じたOJTは必須です。単なる現場同行ではなく、サービス提供責任者や管理者が指導・評価・記録する体制が求められます。
3‑3. キャリアパスと同意取得
外国人スタッフのキャリアアップを見据えた計画を事前に提示し、本人・利用者ともに同意を得る必要があります。書面化し、記録として保管する体制が望ましいです。
4. 特定技能で訪問介護を導入するメリットとリスク
メリット
- 訪問介護に従事可能な即戦力を確保できる
- 在留期間5年+介護福祉士への移行により長期雇用が可能
- 家族帯同が認められるため定着率が高い
リスク・注意点
- 施設系と比べ高い自律性が求められるため教育が不可欠
- ICT導入やマニュアル整備など初期投資が必要
- 訪問サービスの特性上、地域・家庭環境に応じた調整力が求められる
5. 実証事業と現場の声
福岡県や鹿児島県など複数の自治体にて、訪問介護での外国人受け入れに関するモデル事業が進行中です。現場からは「文化ギャップをICTやマニュアルで補完し、外国人職員も安定的に活躍している」「家族との生活支援も行いながら働ける環境が定着率につながっている」などの前向きな声が聞かれています。
6. 今から始めたい!訪問介護に外国人材を迎える3つの準備
- 施設系での経験を持つ特定技能外国人を採用し、訪問介護OJT体制を構築
- 登録支援機関との提携を強化し、教育・定着支援のマニュアルを準備
- ICT・マニュアル整備、職員向け研修を今から段階的に導入
まとめ
2025年の制度改正により、訪問介護でも特定技能外国人の活用が正式に可能となりました。これは人材確保に苦しむ多くの事業者にとって大きなチャンスです。制度要件を正しく理解し、体制整備・教育計画・支援環境を整えることで、長期的に戦力となる人材を確保し、質の高い訪問介護サービスを継続して提供できる環境が整います。今こそ、未来を見据えた人材戦略をスタートさせましょう。