日本の高齢化が進む中で、デイサービスをはじめとする介護施設では慢性的な人材不足が深刻な問題となっています。そこで注目されているのが、「技能実習制度」を活用した外国人材の受け入れです。技能実習制度は、国際貢献と人材確保を両立できる制度として、介護現場でも導入が広がりつつあります。本記事では、デイサービスにおける技能実習制度の概要から、受け入れ手続き、活用メリット、実際の成功事例までを詳しく解説します。
1. 技能実習制度とは?
技能実習制度は、日本が開発途上国の人材に対して技能・技術・知識を移転することを目的として導入された制度です。介護分野は2017年から対象職種に追加され、これまでにベトナム、インドネシア、フィリピンなどから多くの実習生が来日しています。制度は3段階(1号~3号)で構成され、最長5年間の実習が可能です。初年度は基本的な知識や技術を習得し、2年目以降は実践的な業務に従事します。
2. デイサービスでも技能実習生の受け入れは可能?
はい、可能です。介護分野の技能実習制度は、厚生労働省および出入国在留管理庁の定めるガイドラインに基づき運用されており、一定の条件を満たす事業所であれば、デイサービスでも技能実習生の受け入れが認められています。特に、身体介護や生活支援を行う事業所であれば、実習内容が制度の対象に合致しやすく、現場の戦力として実習生を活用できます。
3. デイサービスで技能実習制度を活用するメリット
- 人材確保:地方や都市部問わず、日本人介護人材の確保が難しい中、外国人材による安定的な人員補充が可能
- 現場の活性化:若年層の実習生が加わることで、スタッフ間のコミュニケーションが活性化し、職場の雰囲気が向上
- 多文化共生の実現:多様な文化背景を持つ人材との協働を通じて、利用者への理解が深まり、質の高いサービス提供に繋がる
4. 受け入れの条件と手続き
技能実習制度を活用するためには、以下の手続きと条件を満たす必要があります。
- 認定を受けた監理団体(外部の支援機関)との契約
- 技能実習計画書の作成と申請(外国人技能実習機構への提出)
- 事業所としての要件クリア(介護福祉士の配置、研修体制、語学支援体制など)
- 現地での人材募集、面接、採用決定
- 在留資格認定証明書の申請・発給
- 来日後の導入研修(講義・実習)と、実習スタート
5. 成功事例:地方のデイサービスでの実践
福岡県にある中規模デイサービス施設では、2023年にベトナムから2名の技能実習生を迎え入れました。来日前から現地で日本語教育を受け、N4レベルでの来日を実現。受け入れ後は、スタッフがマニュアルを整備し、マンツーマンでの指導体制を構築。1年後には利用者からの信頼も厚く、「ありがとう」「助かったよ」という声が頻繁に聞かれるようになったそうです。地域メディアにも取り上げられるなど、施設全体のブランド向上にも繋がっています。
6. 注意点と課題
- 日本語教育の継続:現場でのコミュニケーションを円滑にするには、来日後も継続した語学支援が不可欠
- 生活支援体制の構築:住居や生活用品の整備、病院・銀行・公共交通機関の案内など、日常生活面の支援が必要
- 教育担当の確保:経験豊富な介護スタッフをOJTリーダーとして任命し、計画的なスキル教育が求められる
7. 今後の展望
技能実習制度は、今後「育成就労制度」への移行や、「特定技能」へのステップアップも想定される中、制度の柔軟化と人材定着への動きが強まっています。特に、5年満了後に特定技能に移行し、引き続き同じデイサービス施設で就労を継続するケースも増加傾向にあります。制度の移行によって長期的な人材確保が可能となり、介護現場の安定運営に貢献することが期待されています。
まとめ
技能実習制度は、単なる一時的な人材補充手段ではなく、デイサービス事業所にとって中長期的な人材戦略の柱となり得る制度です。正しい理解と準備、そして受け入れ後の丁寧な支援体制を整えることで、実習生は現場の即戦力として成長し、利用者や地域社会からも高い評価を得る存在になります。介護人材不足に悩む事業者にとって、今こそ技能実習制度の活用を本格的に検討するタイミングと言えるでしょう。