介護施設の給食・調理業務は、特定技能「介護」ではなく調理系の分野で外国人を受け入れます。現行の外食業分野は2026年4月13日から特定技能1号の新規受入れが原則停止中で、令和9年度(2027年度)の新規申請分からは飲食料品製造業分野で受け入れる案が示されています。
介護職員と厨房職員の両方が足りない施設向けに、2つの分野の違い、2027年度の変更案、それまでの人手の確保策と相談先を整理しました。介護分野の4つの受け入れルートは「介護の外国人採用ガイド」で比較しています。
目次
介護施設の給食・調理業務で外国人は採用できるか
介護施設の給食・調理業務でも外国人は採用できますが、特定技能「介護」ではなく調理系の分野で受け入れます。現行の外食業分野は2026年4月13日以降に受理した特定技能1号の新規申請が原則認められず、令和9年度の新規申請分から飲食料品製造業分野で受け入れる案が示されています。
厨房の外国人採用は「どの分野で受け入れるか」と「今は申請できる時期か」の2点で判断が分かれます。下の表で、2026年10月時点の状況を整理しました。
| 時期 | 受入れ分野 | 新規受入れ |
|---|---|---|
| 2026年4月12日まで | 外食業 | 可能 |
| 2026年4月13日から | 外食業 | 1号は原則停止(転職など一部例外あり) |
| 令和9年度の新規申請分から(案) | 飲食料品製造業 | 受け入れる案(正式決定前) |
現行制度では外食業分野で受け入れてきた
介護施設の厨房は、これまで特定技能「外食業」の就労先として認められてきました。外食業分野の運用要領では、飲食サービスを営む部門の売上げが事業所全体の主たるものである必要はなく、医療・福祉施設内の給食部門でも就労できると定めています。
受入れの際は、施設の特定給食施設の届出の写しなど、給食部門を運営していることが分かる資料を出します(法務省・農林水産省「特定技能運用要領 外食業分野の基準について」)。外食業の特定技能1号は調理・接客・店舗管理に幅広く従事する前提で、在留期間の一部の期間に調理担当へ配置することは認められています。
2026年4月13日から新規受入れが止まっている
外食業分野は在留者数が受入れ見込数5万人を超える見込みとなり、2026年4月13日から特定技能1号の新規受入れが原則停止されています。同日以降に受理した在留資格認定証明書交付申請は原則不交付、国内での在留資格変更も原則不許可で、特定技能2号は停止の対象外です(農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」、同「停止措置に関するQ&A」)。
出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」(2026年10月19日掲載)では、停止後も次の申請が審査・許可されています。
- 外食業分野の特定技能1号で働く人の転職に伴う変更申請(全件)
- 技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)からの変更申請(例外措置の対象)
- 外食業分野の特定活動(特定技能1号移行準備)からの変更申請(例外措置の対象)
- 上記以外の在留資格からの変更で、2026年4月12日までに受理した申請
- すでに外食業で働く人の在留期間更新(通常どおり審査)
例外措置の変更申請は、同ページで受付日9月30日までの申請を審査終了次第許可しているとされ、この日付は申請期限を示すものではありません。海外からの呼び寄せは、4月12日までに受理された交付申請の交付が受付日順に続いている一方、新たな申請は原則不交付です。
特定技能の介護と飲食料品製造業の違い
特定技能「介護」は身体介護等が主な業務で、調理を主な業務にはできません。飲食料品製造業は食品の製造・加工が業務で、試験・日本語・協議会・受入れ見込数も介護とは別に定められています。
同じ施設で働いても、介護職員と調理員では在留資格の分野が異なります。介護の特定技能そのものの要件は「特定技能「介護」の要件と採用の流れ」で詳しく解説しています。
介護の特定技能で厨房業務を任せられない理由
介護の特定技能は身体介護等に主として従事する在留資格で、関連業務だけを専ら担当させることは認められていません。運用要領は、主な業務を入浴・食事・排せつの介助などの身体介護と、レクリエーションや機能訓練の補助などの付随業務と定めています。
- 認められる例:食事介助など、利用者の食事の場面で介護の一環として行う支援
- 付随的なら認められる例:お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充
- 認められない例:厨房での調理を主な業務とする配置、調理員としての専任
根拠は法務省・厚生労働省「特定技能運用要領 介護分野の基準について」です。人手不足を理由に介護職員を厨房へ回し続けると、在留資格の活動から外れるおそれがあります。
試験と日本語と協議会の違い
介護は介護技能評価試験と介護日本語評価試験、飲食料品製造業は飲食料品製造業特定技能1号評価試験の合格が必要で、加入する協議会も異なります。主な違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 介護 | 飲食料品製造業 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 身体介護等と付随する支援業務 | 飲食料品の製造・加工(2027年度から給食製造を加える案) |
| 技能試験 | 介護技能評価試験 | 飲食料品製造業特定技能1号評価試験 |
| 日本語 | JFT-BasicまたはN4以上に加え、介護日本語評価試験 | JFT-Basic(A2.2相当以上)またはN4以上 |
| 試験免除 | 介護職種の技能実習2号良好修了者など | 本分野の技能実習2号良好修了者 |
| 協議会 | 介護分野における特定技能・育成就労協議会 | 食品産業特定技能協議会 |
| 1号の受入れ見込数 | 126,900人(146,900人へ増やす案あり) | 133,500人 |
| 所管 | 厚生労働省 | 農林水産省 |
介護の試験と免除は厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」、飲食料品製造業は出入国在留管理庁「飲食料品製造業分野」で確認できます。給食製造が移った後の試験の扱いは、まだ公表されていません。
2027年度から給食業務の受入れはどう変わるか
2026年10月19日の有識者会議で、医療・福祉施設の給食業務を令和9年度の新規申請分から飲食料品製造業分野で受け入れる案が示されました。まだ案の段階で、正式な内容は閣議決定と告示の改正後に確定します。
案の理由は、会議資料が示す2026年5月の給食等調理員(学校給食を除く)の有効求人倍率が7.37倍と高く、外食業の停止で施設の食事提供に支障が出るおそれがあるためです。会議資料は、接客の比率が低い給食の事業所が多い点も挙げています。
有識者会議で示された変更案の内容
変更案は、外食業分野の主たる技能(育成就労で計画的に育成する技能の単位)である「医療・福祉施設給食製造」を飲食料品製造業の業務区分へ付け替え、受入れ対象の事業所に施設給食業を加える内容です。会議資料のポイントは次の4点です。
- 令和9年度の新規申請分から、緊急的措置として飲食料品製造業分野で受け入れる
- 対象事業所に、学校教育・医療業・社会保険・社会福祉・介護事業などを営む事業所で「施設給食業」を営む場合を加える
- 外食業分野(5万人)と飲食料品製造業分野(133,500人)の受入れ見込数はどちらも変えない
- 今期の緊急的措置として、新たに受け入れる外国人は飲食料品製造業分野として育成・従事させる
資料は出入国在留管理庁「第15回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」で公開されています。見込数が増えないため、食品工場などと同じ枠を分け合う点も押さえておきましょう。
直営の厨房と委託先の厨房で確認すること
厨房を施設が直営しているか、給食会社へ委託しているかで、外国人を雇う受入れ機関が変わります。直営なら施設の運営法人が雇用主になり、委託なら給食会社が雇用主です。
- 直営の場合:施設の厨房が案にある「施設給食業を営む場合」に当たるかを、正式な告示で確認する
- 委託の場合:委託先が外国人の受入れを予定しているか、人員計画に影響がないかを確認する
- 両方に共通:食品産業特定技能協議会への加入など、飲食料品製造業分野の手続きを確認する
会議資料には直営と委託を分けた説明がありません。直営の厨房で受け入れる予定の施設は、告示が確定した段階で所管の窓口へ確認してから計画を固めると安全です。
まだ決まっていないこと
すでに外食業で働く給食スタッフの扱い、試験の扱い、申請開始の詳しい日程は会議資料に示されていません。現時点では、次の項目を「未定」として扱います。
- 外食業分野で在留中の給食スタッフが、飲食料品製造業へ切り替える必要があるか
- 給食製造の技能を、どの試験で確認するか
- 給食製造の技能実習修了者を試験免除の対象にするか
- 令和9年度のいつから申請を受け付けるか
正式な内容は、分野別運用方針の閣議決定と告示の改正で確定します。決定内容は出入国在留管理庁と農林水産省の発表で確認してください。
介護職員の外国人採用は2027年度にどう変わるか
介護職員については、2027年4月1日に育成就労制度が始まり、同じ会議では特定技能1号の受入れ見込数を126,900人から146,900人へ増やす配分変更案も示されました。厨房の受入れ分野が変わる時期と重なるため、介護職員と調理員の採用計画を分けて立てておくと混乱しません。
介護分野の全体の見込数160,700人は変えず、育成就労の枠から特定技能1号へ2万人を移す内容です。特定技能1号の在留者数の伸びに合わせて枠に余裕を持たせる狙いがあります。
特定技能1号の受入れ見込数を増やす案
介護分野の特定技能1号の在留者は2026年6月末時点で79,884人となり、今の配分のままでは令和9年度後半に見込数を超える可能性があるとされています。そのため、次のように配分を変える案が示されました。
| 区分 | 現行 | 見直し案 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 126,900人 | 146,900人 |
| 育成就労 | 33,800人 | 13,800人 |
| 介護分野の合計 | 160,700人 | 160,700人 |
出典は出入国在留管理庁「介護分野における特定技能1号・育成就労の受入れ見込数の配分変更(案)について」です。外食業のように見込数に達すると新規受入れが止まるため、枠の動きは毎年確認しておきましょう。
育成就労制度の開始
育成就労制度は技能実習に代わる制度で、2027年4月1日に始まる予定です。介護分野も対象に含まれ、原則3年間の育成を経て特定技能1号の水準を目指します。
見直し案では介護の育成就労の見込数が13,800人に減るため、育成就労を前提に大人数を受け入れる計画は見直しが必要になるかもしれません。制度の詳細は「育成就労制度と介護施設の準備」で解説しています。
新たな受入れが始まるまで厨房の人手をどう確保するか
新たな受入れの開始時期が確定するまでは、外食業の特定技能1号で働く人の転職採用、就労制限のない在留資格を持つ人の採用、留学生アルバイトの活用、給食委託の見直しが主な選択肢です。介護職員を厨房へ回す方法は、在留資格の活動から外れるおそれがあるため避けましょう。
案どおり2027年度から飲食料品製造業で受け入れることになった場合も、採用から配置までには数か月かかります。今いるスタッフの在留期限と退職予定を一覧にし、欠員が出る時期を先に把握しておきましょう。
外食業の特定技能1号で働く人を転職で迎える
外食業分野の特定技能1号で働いている人は、停止中も転職に伴う変更申請が審査されるため、介護施設の厨房へ迎えられます。新しい受入れ機関として、施設側が外食業分野の要件と協議会の手続きを満たす必要があります。
採用前に、本人の在留期限と現在の就労先での退職時期を確認しておきましょう。2027年度以降に受入れ分野が変わった場合の扱いはまだ決まっていないため、長期の配置計画は正式発表後に見直します。
就労制限のない在留資格の人やアルバイトを活用する
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者は就労できる職種に制限がないため、調理員として雇用できます。特定技能の支援計画や協議会加入も不要です。
- 永住者・定住者など:フルタイムの調理員として雇用できる
- 留学生・家族滞在:資格外活動許可があれば原則週28時間以内で働ける
- 技術・人文知識・国際業務:調理の現場作業を主な業務にはできない
採用時は在留カードで在留資格と就労制限の有無を必ず確認します。確認方法は出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション」の案内が参考になります。
給食委託を見直す
給食会社へ委託している施設は、委託先の人員計画と2027年度以降の外国人受入れの予定を確認しておくと安心です。給食会社も外食業の停止で特定技能1号を新たに受け入れにくい状態のため、欠員が出ても補充できない場合があります。
- 委託先の厨房スタッフに、外食業の特定技能人材が何人いるか
- その人たちの在留期限と更新の見込み
- 2027年度に飲食料品製造業で新たに受け入れる予定があるか
- 欠員時の代替要員の確保方法
直営の施設でも、外部の給食会社への部分委託やクックチル食材の活用で、少ない人数でも回せる体制を検討できます。会議資料も、カット野菜やクックチルの活用を生産性向上の例に挙げています。
介護施設の外国人採用はどこに相談すればよいか
介護職員の特定技能は介護分野に強い登録支援機関、厨房の調理員は農林水産省の担当窓口や出入国在留管理庁、申請手続きは行政書士へ相談すると整理しやすくなります。相談先を業務別に分けると、次の表のとおりです。
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 介護職員の採用・支援計画 | 介護分野に対応する登録支援機関 |
| 厨房業務がどの分野に当たるか | 農林水産省の担当課 |
| 在留資格の申請・変更 | 地方出入国在留管理官署、申請取次の行政書士 |
| 給食委託の人員計画 | 委託先の給食会社 |
介護職員の採用は登録支援機関に相談する
介護職員を特定技能で採用する場合は、介護分野の支援実績がある登録支援機関を比較して選ぶのが近道で、支援計画の実施や入国後の生活支援も委託できます。試験合格者の紹介まで頼む場合は、その機関が有料職業紹介事業の許可を持っているかを確認しましょう。
料金や対応国は機関ごとに違うため、複数を比べてから決めましょう。比較のポイントは「登録支援機関の選び方と比較チェックリスト」、候補は「介護向け登録支援機関おすすめ」で確認できます。
厨房スタッフは分野の所管窓口でも確認する
厨房の受入れ分野や、自施設が対象事業所に当たるかは、農林水産省の担当窓口と地方出入国在留管理官署で確認します。外食業分野の運用要領は、業務が外食業に当たるか分からない場合の問い合わせ先を農林水産省の外食・食文化課としています。
2027年度からの飲食料品製造業での受入れは、告示と運用要領の改正後に窓口が案内される見込みです。介護の登録支援機関が調理員の支援にも対応できるかは機関ごとに異なるため、依頼前に確認しておきましょう。
よくある質問
- 介護の特定技能人材に配膳や食事の準備を頼めますか?
- 介護の一環として利用者に行う食事介助などは任せられますが、厨房での調理や盛付け・配膳準備を主に担当させることは認められません。利用者への配膳をどこまで介護として扱えるかは、受入れ前に地方出入国在留管理官署で確認してください。
- 介護施設の給食業務で外国人の受入れが再開されるのはいつですか?
- 2026年10月19日の会議で示された案では、令和9年度(2027年度)の新規申請分から飲食料品製造業分野で受け入れます。正式な開始日は閣議決定と告示の改正後に確定します。
- 外食業の特定技能で働いている給食スタッフはどうなりますか?
- 在留期間の更新は停止中も通常どおり審査されています。2027年度以降に飲食料品製造業へ切り替える必要があるかは、会議資料に示されておらず未定です。
- 給食製造の技能実習を修了した人は採用できますか?
- 技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了した人は、停止中も外食業への変更が例外的に審査されています。出入国在留管理庁の審査状況ページにある9月30日は公表時点の許可対象の範囲で申請期限ではないため、個別の状況は地方出入国在留管理官署で確認してください。
- 1人の外国人に介護と調理の両方を任せられますか?
- 特定技能「介護」だけの指定では、厨房の調理を主な業務にはできません。本人が両分野の試験等の水準を満たし、施設も各分野の基準に適合して複数分野の指定を受ければ両方に従事できますが、外食業の停止措置もあるため地方出入国在留管理官署で確認してください。永住者など就労制限のない人なら、介護と調理の両方を担当できます。

